住まいの文化
  建築文化史家 一色史彦
(二)古民家の探訪を  
わが国の住まいというものが辿(たど)ってきた歴史を知ること、あるいはこの地域に残る古民家(指定文化財を含めて)を探訪する事は、現在の、あるいはこれからの住まいを考える上で極めて大切なことと考えています。
 いつ、いかなる時と場においても、人は少しでも快適な住まい方をしようと努力してきた事を忘れてはなりません。見た目だけで判断しては先人に対して失礼、と言う場合もあるに違いありません。快適さを計る絶対的な物差しは現在でもなかなか見出すことはできません。 歴史的資料・遺物を数値的にあらわしてみても当時の生活感情を追体験することはできないのです。
 現今の世相はまさに”何でも文化”の時代です。政治・経済・文化・社会・教育・宗教・芸術、あらゆるものが複雑にからみあい、もつれあいながら動いています。そこでは一人一人の取捨選択の判断が大切になります。判断の材料はできるだけ多い方がよいでしょう。


里美村・菊池家

 戦後間もない頃に「床の間無用」の論文が話題になりました。客人の接待だけの床の間は、いわば身分・格式を重んじた封建制の象徴であり、住まいは住み手のためにあるべきだ、と言うのです。しかし現在の和風住宅に欠かすことのできない設備として生き残ってきました。 私は一棟でも多くの古民家を残したいと考えて今日まで来ましたが、わが家には畳も、床の間もありません。人は矛盾だと言いますが、私にとっては、それらは常に憧れの対象であり、いずれはと思っています。住まいの文化とはそうしたものではないでしょうか。


床の間と付書院

   
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