もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌

2・古代の霞ケ浦

3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運

6・霞ケ浦の水生植物

7・霞ケ浦の野鳥
第二十四話
浄化のシンボル・オオヨシキリ
第二十五話
野鳥の宝庫・浮島湿原
第二十六話
冬の風物詩・カモ
第二十七話
ツバメの越冬地になるか
第二十八話
江戸崎のヒシクイ

8、霞ケ浦の魚・貝類

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化

12、霞ケ浦の化学物質汚染
13、霞ケ浦と農業
14、地球環境と霞ケ浦
15、常陸川水門
16、霞ケ浦の水利用
17、流域開発と環境容量
18、霞ケ浦と文学・映画
19、霞ケ浦の市民運動
20、よみがえれ、豊かな霞ヶ浦

第二十七話   ツバメの越冬地になるか

 霞ケ浦の水ぬるみ、柳青める候になると、春の使者、ツバメが渡来します。今年(平成 二年、一九九〇)は、三月二十六日に土浦市内を飛ぶ姿が見られました。環境庁と山階鳥 類研究所が実施している標識調査によって、日本で繁殖するツバメは、台湾やフィリピ で越冬することが知られていました。ところが昨年、山口県で足環をつけられたツバメが ベトナムで捕えられ、インドシナ半島まで渡ることが初めて確認されました。

 ツバメは田園の鳥ですが、街の鳥でもあります。阿見町君島のある旧家では軒下にツバメの通路用の穴を開け、土間の梁に巣をつくらせ、毎年家族で見守っています。土浦市内では、商店街のアーケードに多数のツバメのつがいが営巣し、やはり市民に見守られながら子育てします。

 両者に共通するのは、水辺が近いことです。ツバメは、水辺に発生する昆虫、特にユスリカ類を大量に食べます。霞ケ浦の水ぬるむころには、ユスリカの羽化が始まり、この時期に一致してツバメが渡来することは、自然の理とは言え、巧妙にできているものです。

 ところが、近年の暖冬傾向を反映して、霞ケ浦でも越冬ツバメが目につくようになりま した。筆者は、平成二年三月九日に玉造町舟津で、湖上を飛ぶ数羽のツバメを観察しました。この時点でのツバメの渡来前線は九州まででしたので、霞ケ浦のツバメは越冬個体と思われます。暖冬傾向が続けば、ユスリカは冬も羽化しますから、霞ケ浦は越冬地として定着するかもしれません。

  再開発されてアーケードが無くなった土浦駅前通り、ツバメは何処に?2021