もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌

2・古代の霞ケ浦

3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運
第十九話
今に残る勘十郎堀
第二十話
東京―高浜間に定期航路

6、霞ケ浦の水生植物
第二十一話
水生植物に復活の兆し
第二十二話
浮葉植物の大敵・アオコ

7、霞ケ浦の野鳥

8、霞ケ浦の魚・貝類

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化

12、霞ケ浦の化学物質汚染

13、霞ケ浦と農業

14、地球環境と霞ケ浦

15、常陸川水門

16、霞ケ浦の水利用

17、流域開発と環境容量

第二十一話   水生植物に復活の兆し

 霞ケ浦が富栄養化する以前、特に夏季には、水生植物が沿岸の湖面をびっしり被い、船外機のスクリューに水草がからまって進まなくなることもたびたびでした。

 また、化学肥料が多用される前は、沿岸の農地の肥料に、水生植物、とくに沈水植物や浮葉植物が利用されました。その採取作業は藻(モク)採りと呼ばれ、かなりの重労働だったということです。この藻採りによって、相当の窒素、リンが除去されていました。

 現在は、富栄養化とアオコ発生による透明度の低下、酸欠、除草剤、それに湖岸工事に伴う生態系のかく乱のために、全体的に植物相が貧弱になっています。

 その中で、沈水植物のうち、富栄養化に強いコカナダモ、オオフサモ(帰化植物)、エビモが流入河川にわずかに残っています。浮葉植物の中では、ヒシ科の三種とリンドウ科 のアサザの回復が大きいようです。特にアサザは、牛堀地先、美浦村の安中地先、北浦の 大洋村地先などで大きな群落が定着し、盛夏には一面に美しい黄花を咲かせています。

 また、在来種のミズアオイ(ホテイアオイに近い種)は、高浜入や土浦入でよく見かけるようになり、夏に紫の花を咲かせています。アサザやミズアオイは、親水公園には欠かせない植物になるでしょう。

 霞ケ浦の水生植物相は、全体としては貧弱ながら、最近少しずつ復活しつつある印象を 受けます。湖岸工事が九割以上進捗して、それなりに沿岸の生態系が安定してきたことと、わずかながら水質改善の兆しが見られるためと思われます。

霞ヶ浦の水生植物(国土交通省・霞ヶ浦河川事務所より)

 湿性植物
ウリカワ/オモダカ科(Sagittaria pygmaea)
サンカクイ/カヤツクグサ科(scirpus triqueter)
 抽水植物
ヨシ/イネ科(Phragmites communis)
マコモ/イネ科(Zizania latifolia)
ヒメガマ/ガマ科(typha angustifolia)
コウホネ/スイレン科(Nupphar japonicum)
ミクリ/ミクリ科(Sparganium erectum)
 浮葉植物
ヒシ/ヒシ科(Trapa bispinosa)
アサザ/ミツガシワ科(Nymphoides peltata)
オニバス/スイレン科(Euryale ferox)
トチカガミ/トチカガミ科(Hydrocharis dubia)
 沈水植物
エビモ/ヒルムシロ科(Potamogeton crispus)
クロモ/トチカガミ科(Hydrilla verticillata)
マツモ/マツモ科(Ceratophyllum demersum)
セキショウモ/トチカガミ科(Vallisneria gigantea)
フサジュンサイ/スイレン科(Cabomba caroliniana)
 浮漂植物
ウキクサ/ウキクサ科(Spirodela polyrhiza)
アオウキクサ/ウキクサ科(Lamna paucicostata)
イチョウウキゴケ/ウキゴケ科(Ricciocarpus natans)