もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌
2・古代の霞ケ浦
3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運

6・霞ケ浦の水生植物

7・霞ケ浦の野鳥
第二十八話
江戸崎のヒシクイ
第二十九話
浮島湿原にタンチョウ飛来

8・霞ケ浦の魚・貝類
第三十話
半分近く減った魚類
第三十一話
湖水汚染でワカサギ激減
第三十二話
産卵期迎えたクルメサヨリ
第三十三話
繁殖するブラックバス

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化
12、霞ケ浦の化学物質汚染
13、霞ケ浦と農業
14、地球環境と霞ケ浦
15、常陸川水門
16、霞ケ浦の水利用
17、流域開発と環境容量
18、霞ケ浦と文学・映画
19、霞ケ浦の市民運動
20、よみがえれ豊かな霞ヶ浦

第三十二話   産卵期迎えたクルメサヨリ

 初夏、風のない穏やかな日に霞ケ浦湖畔を歩くと、船だまりでクルメサヨリの小群が産卵行動をしているのを見ることがあります。クルメサヨリは、サヨリに近縁の汽水魚で、淡水化した霞ケ浦によく適応して生息しています。

 霞ヶ浦では、漁師の網に入ることがありますが、商品価値がないので、漁港付近によく捨てられています。

 サヨリは西日本の沿海に多く、魚体は大きくて美しく、美味で鮨ダネとして人気があり ます。一方、クルメサヨリは細く小さく、頼りなげで珍重されません。しかし吸い物や酢のものにすると絶品です。

 霞ヶ浦では、クルメサヨリは五〜八月に、波が静かで水草が繁茂する場所で産卵します。卵は付着卵で、水草に産みつけられます。孵化した仔魚は、体長一センチメートルくらいになると、下あごが伸び始め、浮遊しているプランクトン類を食べます。成魚は十八センチメートルくらいになり、そのうち下あごは約四センチメートルです。この長い下あごで水面近くを漂っている餌をすくうようにして食べます。しかし、アオコを食べてくれるかは、わかりません。

 クルメサヨリは、よく見るとなかなか姿が美しく、出島村立霞ケ浦水族館(現・かすみがうら市水族館)では、ワカサギとともに水槽で飼育されています。しかし水槽が狭いために、下あごがガラスに当たってつぶれてしまっているのは残念です。

 話題になることが少ない魚ですが、霞ケ浦の多様な生態系を構成する一員には違いありません。

  かすみがうら市水族館。写真を撮った日にはクルメサヨリは無かった。