もくじ

表紙
1・霞ヶ浦の地誌
2・古代の霞ケ浦
3・霞ヶ浦の民俗・信仰

4・霞ヶ浦と洪水

5・霞ケ浦の水運

6・霞ケ浦の水生植物

7・霞ケ浦の野鳥
第二十八話
江戸崎のヒシクイ
第二十九話
浮島湿原にタンチョウ飛来

8・霞ケ浦の魚・貝類
第三十話
半分近く減った魚類
第三十一話
湖水汚染でワカサギ激減
第三十二話
産卵期迎えたクルメサヨリ

9、霞ケ浦の漁業

10、霞ケ浦とアオコ

11、霞ケ浦の富栄養化
12、霞ケ浦の化学物質汚染
13、霞ケ浦と農業
14、地球環境と霞ケ浦
15、常陸川水門
16、霞ケ浦の水利用
17、流域開発と環境容量
18、霞ケ浦と文学・映画
19、霞ケ浦の市民運動
20、よみがえれ豊かな霞ヶ浦

第三十一話   湖水汚染でワカサギ激減

 霞ケ浦、利根川水系のワカサギは、太平洋側の分布の南限になっています。日本海側の南限は、島根県宍道湖です。

 ワカサギはキュウリウオ科に属し、キュウリウオ、シシャモ、チカ、アユもその仲間です。この科の魚は、北方の沿岸域、汽水、河川、湖沼に生息し、遡河性であぶらびれがあるなど、サケ科に近い生活様式や形態を持っています。また、キュウリウオ科の名のとおり、味は淡白で芳香があります。

 霞ヶ浦のワカサギは、最後のウルム氷期(一〜七万年前)の遺残種と思われます。産卵期は一月〜三月で、流入河川の水深二十〜四十センチの砂礫底や水草を産卵場とします しかし、霞ケ浦の流入河川は、ヘドロで汚れ、透明度の低下や除草剤の影響で、水草が極端に減っていますから、ワカサギのよい産卵場はほとんどありません。

 漁協では、諏訪湖のワカサギ卵を取り寄せ、人工孵化、放流を行いました。しかし、こうした努力にもかかわらず、霞ケ浦のワカサギの漁獲量は低迷しています。その最大の原因は、湖水の汚染などで、生態系全体がワカサギの生息に適さなくなっていることです。

 霞ケ浦の浄化運動は、ワカサギがたくさん生息し、安心して飲める湖水に戻すことを、第一目標にすべきです。

  昭和40年代までワカサギ漁していた帆曳船。現在は観光のみ運行。