012・三村の常春寺

 旧石岡市内で最も大きな樹木は、三村・常春寺の境内にある樹齢500年といわれる榧の木だそうです。根回り6m、目通り5m半、高さ20mの堂々とした巨木は、遠く離れた田んぼからもよく見えます。ただ、近年になって樹勢が衰えたため、寺では回復の手立てを施しているところです。

 この由緒ある寺・萬隆山常春寺は、430年前の元亀2年(一五七一)に創建された曹洞宗の寺院で、諸士久保(しょじくぼ)集落の高台にあります。

 常春寺を開いた三村城の城主・常春公は、府中城主・平清基公の弟で、佐竹氏・小田氏などの豪族による侵略に備えるため、三村に派遣されたのでした。常春公は神仏の信仰厚く、常春寺を祈願所とし深く信仰していました。

 元亀42月、小田天庵の大軍に攻められ、防戦むなしく落城した常春公は、4人の部下を従えて落ち延びようとしましたが、城の東にある泥田に馬を乗り入れて25歳の若さで戦死しました。

 常春公の首塚とも伝えられる墓は、寺の東側・常磐線のすぐそばの窪地にあります。椿が繁るその脇に、ひっそりと五輪の石塔が立っています。

 榧の木のある境内からは、常春公が馬を乗り入れた田が眼前にひらけ、遠くには恋瀬川の堤防や高浜の家並が望めます。室町時代から500年、ずっとこの地に根を張ってきた巨木は、常春公の戦死や様々な世の中の変遷を眺めてきたことでしょう。

         山門                    本堂

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